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2018 年に読んで印象に残った本

忘れるといけないので、2018 年というタイミングで読んで印象に残った本の感想を書いておきます。

サピエンス全史

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

人類の歴史は、虚構の物語をどれだけたくさんに人に信じさせるかの歴史だった、という論調で話が進んでいく。 物語 (宗教、国家、有限責任会社、資本主義 ) の存在を信じる人が増えれば、やがてその物語は現実に強い影響を与えるようになる。

そして社会を維持している秩序(=物語)は、神々や自然法則によって生み出された客観的事実であると主張し続けることによって、多くの人に信じさせている。 この物語を盲目的に信じる人がたくさんいることで、世界は成立している。

この解釈は僕にとっては救いで、『なんだ、物語の影響を受けまくってる「世界」って小説やアニメの影響を受けまくってる「僕」と何もかわらないじゃん。たいしたことないな』みたいな気持ちにさせてくれる。清々しい。

また、この本では人類の幸せとは何かという点に多くのページを割いている。

私たちは中世の祖先よりも幸せで、また彼らも石器時代よりも幸せであるという価値観は間違っていると主張する。 幸せは、愛情やお金や社会的地位の向上によって生まれるわけではない。セロトニンドーパミンなどのホルモンが分泌されることで幸せになるらしい。

人類が宇宙に行けるようになったって、インターネットで 24 時間コミュニケーションができるよになったって、それが幸せにつながるとは限らない。

だから、人類が幸せになることを目的とするなら、幸せになるためのホルモンを分泌を促進する薬の開発を行うべきなんじゃないかという主張が続く。

僕はこの主張に強く賛成する。毎日幸せになれるお薬を摂取して、平和で穏やかに暮らすことより幸せなことってあるだろうか。

サピエンス全史を読み終わったあと、僕は「しあわせの理由」と「すばらしき新世界」を読み返した。

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

やっぱり幸せというのはコントローラブルであるべきなんだよな、という認識を強くした。 たとえそこに自由意志がなくても(しあわせの理由)、社会制度がディストピア的であっても(すばらしき新世界)、幸せになれるのであれば、そんなに悪い選択じゃないように思える。

フリーランチの時代

フリーランチの時代

フリーランチの時代

現在の社会制度は、当然のことながら人間が死ぬことを前提として作られている。 そんな中、突然なんらかの形で死を克服することができるようになったら…というお話がまとめられた短編集。

やっぱり、技術によって社会の有り様が変わっていくのは、やっぱり SF の醍醐味なんだなとあらためて実感した。 一番おもしろかったのは「Live me ME」という短編。以下の文章ががすごく印象に残っている。

人間は想像力を、いくらでも捨ててしまえるのだ。画面に映っただけの虚像に、強い思い入れを抱いてしまえるほど。

これって、バーチャル YouTuber ブームにつながるところがあると思いませんか? 少なくとも、僕は彼ら彼女らのぎこちない動きを豊かな想像力で補っているというよりも、想像力を捨て去ることで感情移入をしているようだった。みなさんはどうですか?

この短編集が気に入ったので同作者の本を何冊か読んでみたが、老ヴォールの惑星もすごく面白かった。

老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星

特にこの中に収録されている「漂った男」は SF 史に残る名作。おすすめ。

無職転生

壮大な人生の物語。全力で生きなかった前世に対する後悔と、その後悔をバネにした転生後の努力。 信仰、家庭、老後、間違いなくそこに一人の人生がある。

また、作品として一人の人間がここまでの作品を、編集などに頼らずまとめ上げたという事実に衝撃を受けた。

「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」

この有名な格言は、きっと一人で遠くまで行けない人が生み出した言葉なんだと思う。 みんなで遠くに行こうとすると、きっと鈍ってしまうものがある。

僕は一人で遠くまで行けないけれど、一人で遠くまでいける人を絶対に邪魔しちゃだめだな。

最後にして最初のアイドル

オタク文化の想像力が宇宙を侵食する。 ああそうか、百合っていうのは実存主義で、そして宇宙なんだな、ということに気付かされる。

そう、世界は百合だったんだ。

所感

振り返ってみると、今年は虚構が人生を変えるというテーマに強く惹かれた一年だった。 新卒として慣れない仕事を覚えながら、現実と折り合いをつけるために選ばれた本なんだと思う。 学生の頃のセレクションとはやっぱり少し傾向が違うようにも思う。

2017年に読んで印象に残った本 - drilldripper’s blog

来年も面白い物語が読めると良いな。